【令和6年4月から】”相続登記”の義務化。「義務化の内容」と「対応すべきこと」をやさしく解説。

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執筆者 塩谷 陽子(しおや ようこ)
 つなぐ司法書士事務所 代表司法書士

信託・相続・登記を専門とする、つなぐ司法書士事務所(所在地:横浜市旭区)の代表。大学卒業後、都内のコンサル会社で複数のプロジェクトを経験し、2016年に司法書士試験に合格。都内司法書士法人で不動産、相続、後見、企業法務などを多数経験し、2023年に独立。女性ならではの丁寧・親身な対応で多数の顧客から支持されている。

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「相続登記の義務化」ってニュースで見たのですが、確か、母が亡くなって家を相続しましたが、相続登記をしたのか覚えていなくて不安です・・・

塩谷

相続登記の義務化は令和6年4月1日から始まります。過去の相続でも対象となりますが、これから手続きをすれば十分間に合います!
義務化の内容と、相続登記の手続きの流れを、やさしく解説していきますので、最後までご覧ください。

みなさん、こんにちは!
つなぐ司法書士事務所の塩谷です。

令和6年4月1日から、 相続登記 が法律により義務付けられれますが、「 義務化 」と言われても、自分は対象となっているのか、いつまでに何をすればいいのか、ご不安に思われている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続登記義務化の内容や対応策、相続登記の手続きの流れについて詳しく解説していきます!

今回の記事のポイントは、次の通りです。

今回の記事のポイント
  • 相続登記の義務化は、令和6年4月1日スタート
  • 相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更の手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
  • 遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請をする必要があります。
  • 令和6年4月1日以前の相続であっても、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。
  • 遺産分割協議がまとまらない、行方不明の相続人がいるなど、3年以内に相続登記ができない可能性があれば、「相続人申告登記の申出」という制度を利用すれば、申請義務を履行したものとみなされます。
  • 氏名や、住所を変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由がなく手続きをしなければ5万円以下の過料の対象となります。
目次

そもそも相続登記とは?

相続登記とは、土地や建物・マンションなど(不動産)の所有者が亡くなった場合、その不動産の名義人を相続した人の名義に変える手続きのことです。

例えば、親や配偶者から相続した財産の中に、家や土地などが含まれている場合は、相続登記をする必要があります。

土地や建物・マンション(不動産)の名義人は、法務局が管轄している「(通称)登記簿」と呼ばれるデータベースに記載されていいます。この登記簿に記載されている不動産の名義人を変更するために、法務局に対して、「名義人を変更してください!」と申請することを「登記申請」といいます。
そして、「相続」が原因として、法務局に名義人を変更する申請(「登記」)のことを「相続登記」と呼びます。

登記簿見本

「相続登記義務化」制度の内容

どうして相続登記は義務化されたのか?

相続登記は、これまで「任意」の手続き(=登記しなくてもしても、どちらでもOK)とされてきました。その結果、名義を変更せず、亡くなった方が所有者のままの不動産が多くなったことで、今本当は誰が所有しているのかわからない(所有者不明の)不動産があまりにも多くなり、税金問題や所有者をめぐるトラブルが多発し、問題となりました。国土交通省が調査したデータでは、平成28年度に調査した土地の内、約36%が所有者不明の土地とされ、今後もこうした所有者不明の不動産は増え続けるとされています。

なんで、所有者不明の不動産が増えると問題なんですか?

塩谷

所有者が不明の土地や建物は、樹木などが生い茂り、景観の悪化ゴミの不法投棄などを招いて近隣住民に迷惑をかけたり、土地収用制度等の公共事業に使用することができなくなるなど、不動産を有効活用することができなくなります。今後もこういった土地が増えると、経済損失は少なくとも6兆円になるともいわれています!

高齢化社会になり、相続が増えるにつれて相続登記をしっかりしないと、所有者不明の不動産がどんどん増えていくので義務化する必要があったのですね!

こうした背景から、不動産の現在の所有者を明確にするために、相続登記を義務化する必要があったのです。

相続登記はいつまでにする必要がある?

令和6年4月1日以降に相続が発生した場合

相続により(遺言による場合を含みます。)不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

そして、「不動産を取得したことを知った」とは、「自分のために相続の開始があったことを知り」、かつ「その不動産の所有権を取得したことを知った日」であることを指します。

つまり、3年以内のスタート日は、相続が開始した日(亡くなった日)ではなく、「不動産の所有権が自分になったことを知った日」です。

たとえば、お父さんが令和7年1月1日に亡くなったと場合を考えてみましょう。
その妻と息子A、息子Bの3人で遺産分割協議を行い、令和7年2月1日に息子Aが自宅の不動産を相続することが決定しました。このケースの場合、令和7年2月1日から起算して3年以内ということになります。

遺言書が存在し、その遺言によって不動産の所有権を相続した人は、「相続が開始したことを知り、かつ、遺言によってその不動産の所有権を相続したことを知った日」から3年以内に、その相続登記をする必要があります。

令和6年4月1日よりも前に、すでに相続が発生している場合

法律が施行される令和6年4月1日より前に、相続が発生していて、相続登記を行っていない場合はどうなるでしょうか?
この場合は、制度のスタート(令和6年4月1日)から3年以内に相続登記を行う必要があります。

具体的には、令和9年3月31日までに相続登記を済ませましょう。

相続登記おまかせパック

相続登記義務違反による過料とは?

相続で不動産を所有したのに相続登記をしない場合で、かつ、法務局からの催告を受けたにもかかわらず、正当な理由がなく3年以内に相続登記を申請をしない場合、10万円以下の過料の対象となります。これは、遺言書などで所有権を取得した場合も同様です。

過料決定までの流れ(法務局から送られてくる「催告書」が来てから対応すればセーフ)

期限内に相続登記を行わない人に対して、いきなり過料通知が来るわけではなく、一度、「相当の期間内に申請してくださいね」という趣旨の催告書が法務局から届きます。
この催告書は書留郵便や信書便を使って送付されます。

そして、催告書に記載された期間内に相続登記が申請されないときに限り、法務局は、管轄の地方裁判所に通知します。
その後、通知を受けた地方裁判所は、過料決定に関する判断を行うものとされています。

逆を言えば、この催告に応じて登記申請を行えば、過料事件の通知はされる対象外となります
相続登記の申請期限となる3年を過ぎたからと言って、自動的に過料の対象となるわけではありませんので安心してください。

法務局が申請義務に違反した人を把握する方法

それでは、法務局は、どのようにして申請義務に違反した人を把握するのでしょうか。

その手がかりの方法として、法務省は次のような通達を出しています。

① 相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき
② 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき

法務省令和5年9月12日通達 https://www.moj.go.jp/content/001402460.pdf
塩谷

簡単にいうと「相続人が相続登記等で法務局に提出した書類で、登記していない不動産があった場合」に限定しています。
現段階では、法務局が積極的に相続登記義務違反を調査するということではなさそうですね。

相続登記をしなくても良い「正当な理由」とは?

相続人が多くて遺産分割協議が全く進まないのですが、3年以内に相続登記ができるかどうか不安です・・・。

塩谷

はい。どんな事情があっても無理矢理、相続登記をしろというわけではありません。下記のような、登記の申請ができない正当な事情があり、法務局から送られてくる催告書に正当な理由を申告し認めてもらえれば、過料の対象から外してもらえます。

正当な理由にあたるケースとは?
  • 相続人が極めて多数で、戸籍等の収集や、他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が裁判などで争われていて、誰が相続するのか明らかにならないケース
  • 相続した人が重病等で、相続登記の申請をするのが極めて困難であるケース
  • 相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合(DV被害などにあっている場合
  • 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

上記に該当しない場合でも、法務局は、相続登記の申請をすべき人の事情を総合的に考慮した上で、個別の事案における具体的な事情に応じて申請できない理由に正当性がある場合、「正当な理由がある」と認められる余地があります。お困りの方は、近くの法務局や司法書士に相談されることをお勧めいたします。

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相続登記の手続きの流れ

現時点で、相続登記をしていない場合は、正しい所有者を登記簿に反映させる手続きをとる必要があります。罰則の対象にならないよう、速やかに手続きしましょう。

まず、相続登記は、その不動産を管轄する法務局に、必要な書類を提出して登記手続を申し出ます。

大まかな流れについて、詳しくは▼「相続登記の手続きは8ステップ! 必要書類や費用を司法書士が分かりやすく解説」をご覧ください。

相続登記が申請できない場合の対応策【相続人申告登記】

相続人や財産が複雑で、相続登記を速やかに申請できない場合は、どうすればいいでしょうか。法務省では、そういったケースに備えて、「相続人申告登記」という制度を新たにスタートします。「相続登記」とはまた違った制度になりますので、詳しく見ていきましょう。

相続人申告登記とは?

遺産分割協議がまとまりそうにないケースや、相続人の把握ができないケースなどにおいて、「相続人申告登記」の申出をした場合は、相続登記義務を免れる制度も令和6年4月1日からスタートすることになりました。

これは、相続登記の申請義務を履行するための簡易的な方法として位置付けられ、「不動産の名義人が亡くなったこと(相続が開始したこと)」と、「自らがその相続人であること」を申し出ることによって、相続登記の申請義務を履行したものとみなされる制度です。

申出がされた場合は、法務局が審査した上で、登記簿に申出をした者の氏名、住所などを登記官が登記簿に記録することになります。

(出典:国民生活センター 相続土地の登記義務化と
国庫帰属制度)

登記簿のイメージ

相続申告登記は、相続登記とは異なり、権利の取得の事実を公示するものではないので、相続登記の義務を免れる効果のみにとどまることに注意が必要です。
あくまで「登記簿上の所有者」が亡くなっているということを示しているにすぎません。

塩谷

遺産分割協議が整う等、相続登記ができる状態になったら、申告をしていても相続登記(不動産の名義変更)を申請する必要があります

相続人申告登記の手続き方法

相続人申告登記は、相続登記の申請義務を履行する簡易的な方法として、手続も簡略化されます。
具体的な方法は、通達が公表され次第更新しますが、現段階では次の通りとされています。

相続人申告手続の具体的方法について
  • 相続人申告登記の申出は、書面による方法(管轄法務局の窓口に提出する方法又は管轄法務局に郵送する方法)と、管轄法務局宛てにオンラインで送信する方法を認める。オンラインによる申出は、Web ブラウザ上での負担の軽い手続を可能とし、単純な相続の事案では、オンライン上で申出を完結することができるものする。
  • 申出をする本人の意思確認の方法として、書面による申出の場合の提出書面に対する押印や、オンラインによる申出の場合の提供情報に対する電子署名の付与は不要とし、それに代わる負担の軽減された確認方法を用いることとす
  • 申出に必要となる基本的な添付情報は、次のアからウまでのとおりであるが、行政間の情報連携等を効果的に用いることにより、可能な限り、添付省略や写し(コピー)等の提供で足りる取扱いを認めることとする。

    ア 申出をする者の本人確認情報

    イ 相続があったことを証する情報
     戸籍関係書類として、申出をする者が登記簿上の所有者(被相続人)の相続人であることを確認することができる範囲で足りるものとし、相続登記の申請手続とは異なり、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍関係書類までは要しないこととする。さらに、今後運用が開始されることになる戸籍電子証明書の活用により、戸籍関係書類の提出を不要とする方策についても、速やかに検討を進める。

    ウ 申出をする者の住所を証する情報
     申出をする者が、申出の際に、その生年月日等の検索用情報(登記官において住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)から情報を取得するために必要な情報)を法務局に提供して、登記官が住基ネットとの連携によりその住所を確認することができる場合には、住民票の写しの提供を不要とすることとする。
相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン https://www.moj.go.jp/content/001393077.pdf

とはいっても、相続登記何をすればいいのか、わかりませんよね。法務局などに質問することもできますが、まずは、登記の専門家である司法書士にまずは、相談をしてみるのが良いでしょう。初回の相談であれば無料でやってくれる司法書士もあります。ホームページなどで検索してみてくださいね。

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